「花見したい」
「えっなにそれお願い?」
「願望」
「しよーぜ花見! いつ行く!? 今日行く!? 今から花見っちゃう!?」
「あーじゃーそーしよ」
ていうわけで、俺のいとしい高遠のお願いだからさー叶えないワケにはいかないっしょや? いくら夜の十時過ぎでもな! いっくら風すっげー外強いんですけどお! みたいな感じでもな! 高遠がさー花見したいって言うんだもん。まー三時間もぶっ通しで無双ってたらちょっと目も疲れるっていうか、喉とか乾くし。休憩がてら高遠に触ってみたりとか、今日はさーせっかく泊まりなんだし、あっちなみに高遠の部屋ないつも通り! こう、春の陽気に任せて一気に大人のかいだんのーぼるーっみたいな空気になってみない? ていうか? 花見とかいいじゃーん、だってこの前の金曜ぐらいに開花だったろ確か。なっちゃん言ってたし。なっちゃんてお天気おねーさんのなっちゃんな。
まだ夜はちょっと寒いから、俺と高遠はジャージの上から適当に上着をもう一枚羽織る。風が物凄く強いんだって今夜は。せっかく咲いた桜も一気に散るんじゃね? っていうぐらい強い。高遠は風呂上がったばっかだったから髪がまだ濡れてんだけど、あーもーマジ色っぽいよなあ。ちゃんと拭けよって俺がタオルとかで拭いてあげんだけどさーそうすると何、借りてきた猫みたいな? 大人しくさあ、ちょっと気持ち良さそうに目とかつむったりするじゃあん! うっわもうなに可愛いしやべーし、なにその顔! 風邪とか引くとイヤだからちゃんと俺も拭くんだけどな、使命感っつうの? カワイソーじゃん高遠が部活できねーとかさあ、寝込むと長いし高遠。まあその高遠を看病するのも俺の使命だから別にいいんだぜ俺は寝込んでもね、いつだって高遠の傍に居て高遠がさみしくないようにリンゴのヨーグルトとかあーんってしてやれるんだし。
高遠んちは今日おじさんとおばさんが旅行で居ない。ついでにねーちゃんは友達とオールでカラオケとかなんとかっつってて居ない。つまり二人っきりってワケじゃんこのシチュレーション何。誘われてるとしか思えねー!! やばい!!! 今夜は寝かせないぜ的な! 俺に惚れると火傷するぜみたいな!!! いやもう俺は既に高遠に火傷してんよマジだよマジ。
だからさ、まーこーして夜中に花見行こーぜーとか言っちゃっても誰もナンも怒ったりしないわけだ。高遠もだから今から花見したいとかお願い言っちゃったりしたんだと思う。
高遠は上着のポケットに両手入れて、ちょっと眠そうにずれた眼鏡を直した。あー髪やっぱ、もうちょいちゃんと拭いてやればよかったかなーまあ色っぽいから良し。他に誰も見てねーよな? これはねー俺の! 高遠くんなんだからあ!!! こんな色っぽい夜の顔した高遠は誰にも見せらんねーよマジストーカーとか後ろから付いてきたりしてね? 平気? 陸上部の部長とかおらんよな? 良し!!!
「公園でいーっかね」
「ん」
「うっわつうかマジ風つえー平気? さむくね?」
「へーき」
公園の脇にあるテニスコートのライトって言うんか、あのデカイ光も今日は点いてなくって、街灯がぽつんぽつんって光ってるだけだった。ピンク色した桜は風でがんがん煽られてるけど、けっこうまだ残ってる。そりゃそうだよな、咲いたばっかなんだし。
高遠は上着に手を突っ込んだまま、桜の木の下まで来てぼーっと上を見上げた。ばらばら紙ふぶきみたいに降ってくる花びら頭から受け止めちゃってさー、あ、しまったよ俺カメラ持ってくるんだったわ……! こんな綺麗な高遠写真に残せねーとかマジショックだわーっていうかもったいねえし! ウッワアマジ失敗した。やべえ。しょーがねーので目に焼き付けておくことにする。まあ俺は毎日だって高遠のいろんな顔を目といわず心とか脳みそとかに焼き付けてっけどね! いつでも再生可能だから!
「なに」
「高遠が綺麗で見惚れてる」
「きもい」
「桜きれーじゃん」
「そーだな」
「でも高遠のがもっと! きれーだしかわいいし、なんかもう俺酔っちゃうわ高遠の魅力に酔っちゃうわ桜の花とかバックに背負っちゃうんだもん。絵になりすぎやっべえ」
「は?」
影かかってる横顔って惚れるよなー新しい一面発見、みたいなさあ。あー惚れ直しそう。いつだって俺は高遠が好きだよ。だって高遠だしさ。高遠がホントマジ好きだよあーやばい、帰ってさー一緒に寝たりさーいろいろしよーよもーさーあ! 高遠のせいでムラムラドキがムネムネもしますってもんだろーだって春だぜ? 春だし! 桜も綺麗だしさー桜見ながらキスとかって、ちょ、やばくね!? 青春っぽくね!?
「キスしよう」
「あー」
「マジ!?」
「は?」
***
桜綺麗でしたね。