君を頭から食べる方法

 高遠の好物はアルフォートだ。
 アルフォートな、あのチョコレートの、船の絵が描いてある菓子。スーパーでもコンビニでも駅ナカでも売ってて、値段は大体九十円から百二十円ってとこ。正直安上がりな高遠の好物は、俺が高遠へ献上する貢ぎ物ナンバーワンだったりするんだよなあ。
 いやだって高校生のふっつーの安上がりな小遣いで買える範疇じゃん? アルフォートとかマジ安いっしょ、もちろん俺は高遠がほしいっつったらガンブレードだろーが、近未来猫型ロボだろーが、エデンのリンゴだろーが、自由の女神の松明だろーが持ってきてあげっけどね!! あっ無理って顔したっしょや? いやいやマジだよこれ、ほんとマジだってその気になれば人間なんでもできるって言うじゃん! できないことはないと思うじゃんなあ、愛のナセル技があれば! 真実の愛と正しい真心は世界と高遠と俺を救うんだって!
 ミルク、ビター、ホワイトって具合に味の種類はあるけど、高遠は特にこれがいいってこだわりはないみたいに適当に食べる。俺が何を買ってきても文句言わんし、自分で買うのも目の前にあったやつって感じで、今日はこれがよかったとか言ったりもしない。多分味がどうってんじゃなくて、もーほんとアルフォートそのものが好きなんじゃねって感じ。好物っていうか、んーお気に入り? それって好物ってことか。こればっかは俺も嫉妬のしようがないなーって感じじゃん!
 だって相手はチョコレートっすよチョコレート、高遠の口の中でとろけて腹ん中に吸い込まれてくチョコ、あー甘ったるくなるんだろうな高遠の口んなか……ってなにそれすげー羨ましいんですけどお! 俺のことも溶かしてくれないかなー高遠さー、もー俺は高遠にメロメロだから溶けてるも当然だけど! メッロメロだよ、死語とか関係ないくらい俺は高遠にとろけてます、はいこれテスト出る。高遠が吸血鬼とかでも俺はオールオッケーぜんぜん問題ないよモーマンタイだって。高遠の中で俺が生き続けると思ったら、ってこれなんかあれデジャヴ?
「も一個」
「はい、あー」
 そんな高遠は部屋でWiiなう。みんな大好き配管工がビジネスパートナーの怪獣の城に姫助けに行くゲームな。つまり高遠は両手が塞がってる上に視線はテレビに釘付け、俺は高遠の隣でアルフォートを高遠の口に運んでやる仕事ってワケ。これがけっこー重要なんだなー。俺は一粒ずつチョコを摘んで、高遠の口に運ぶ。タイミングとかもあるわけじゃん、ボス戦の最中にやってもなんか違うじゃん。難しいんだぜけっこーこれマジ。
 高遠は画面に集中してっから、無防備に口だけ開けて、俺が放り込むアルフォートを食べる。これが可愛くなくて、他になんて言うよ……まるで雛鳥じゃね、親から餌をもらう雛鳥! つまりさ、高遠にとって俺ってば必要不可欠っつうか、いなきゃいけない存在ってわけじゃん? あーん、とかしたら口開けんだぜ! 高遠が! あーもう俺が食っちゃいたいよ高遠! 別に俺がアルフォート役で俺を食ってくれたっていいんだぜ高遠! 高遠にだったら俺喜んで食われるもんマジ。
 今日のアルフォートはビターチョコ。茶色のパッケージは開けた時より軽くなってて、俺のいとしい高遠が全部食べた後だ。空っぽになったパッケージをひっくり返して、一粒も残りがないか確認する。高遠は俺をちらっと見てきた。
「もーねえの」
「ないない。全部高遠が食べましたあ、高遠キスしよう」
「きもいです」
「いいにおいする」
「チョコだろ」
 今さっきまで高遠の口の中にはチョコレートが詰まってて、高遠の舌がチョコ溶かしてほっぺたの内側で味わってごっくんしてんだと思ったら俺はもう死ねる。いや死なんて! そんかわり限りなくあらん限りの妄想でいける。マジ。あーあ高遠すげーえろい。んでもチョコ食ってる高遠はえろいより可愛い。可愛すぎてもう一個アルフォート開けちゃう俺ってばあーほんと高遠好きじゃん。そして愛されてる。これは愛だよ、バレンタインだって高遠にアルフォート好きなだけプレゼントしてやんよ!
「マジで」
「マジマジ、大マジだってばよ。俺高遠に貢いで生活してもいーよ」
 そう言うと高遠は、おもむろにコントローラをベッドに投げ出して、床に置いてあった自分の鞄を取った。いつも学校に背負ってってるやつだ。そこから自分の財布を出して、千円札を取り出すと俺の顔の前に出した。
「買ってこい」
 ああ高遠ね、そーやって嬉しそうに言うから俺も嬉しくなっちゃうんだって! まさかヤダって言うと思うか? んなわけねーじゃーあん! そんなかわいくおねだりされたら俺もう参っちゃう! 高遠ってば罪深い! ああもういくらでも買いますとも。高遠がよこした千円と、俺の財布に入ってる千円でアルフォート一気買いってことっしょ。なんつー高校生買い。俺は大好きな可愛い高遠のために千円を受け取った。



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今回はなかなかまともだな遠藤