君しか見たくない時には

 今日もかっこいい俺の大好きな高遠くん。
 高遠の席は俺の斜め右四十五度、とかそういう位置じゃなくって、俺の後方しかも列で言うと左にみっつ、後ろに五席離れたところだ。わかった? わからん君に具体的に教えてやろう。俺は教室廊下ぎわ一番前はじっこ、高遠は窓側二列目の後ろから数えてひとつめの席だ。これでわかったろ!
 えーっとなんだ、つまりだね、俺の大好きな高遠君、しかもこれ高遠はえろかっこいいっつーやつだよ今流行りの! 本当は俺の一個前とか、俺の一個後ろとかの席だったらこう、なんつうの? 席が近いこそのドキドキっつうの? そういう甘酸っぱい経験みたいなのが出来たかもしらんのだが、くじ運の神様は俺を見放しで、ついでに俺と高遠の席も離しちゃったっつーわけなの。でもさあ、離れてこその恋人同士っていうかー、いいよね離れてんのも!
 そんな感じで今日も俺はポジティブシンキン、授業中にちらっと斜め後ろ窓側二列目後ろから数えてひとつめの席を覗き見る。高遠はぼやーって窓の外を眺めていた。俺たちのクラスは中庭に面した教室だから、特に窓の外になんか面白いもんがあるとは思えないんだけど、高遠は大体ほっとんど、あーやって外を眺めてる。多分授業がつまんねーんだろーなーとか検討してみるけど俺は俺で高遠を眺めるのに忙しいから、多分理由としてはそんな感じ。以心伝心みたいな? どーするよそれ照れるし!
「遠藤お前黒板見ろ、黒板! 次指すぞ」
「ちょおおおお待ってよタニセン俺わかんねーバカだからわかんねーちょっどこねえどこ?」
「聞いてろ!」
 タニセン〜ちょっとちょっと〜俺が大好き高遠くんに見とれてる間にそれなくね? あーちょーひどいね、ね、そう思うだろ高遠?
 俺の必死な電波攻撃と、タニセンからの遠藤前見ろ攻撃にも反応することなく、高遠は相変わらず窓の外を見つめてた。そっちにはなにがあんのさ、なんもねーっしょや? 授業より俺より面白なものがあるんですか高遠さん。
 俺はちょっと自暴自棄になりそうな気分だった。アンニュイなんだ。高遠がどっか見てるだけで俺はけっこー不安になるし甘酸っぱい気持ちになりたくもなっちゃうし、ついでに言うならその横顔もちょーえろいちょーきれい。眼鏡の奥でなんとなく眠そうにしてんのも、いいね、いいよ俺の妄想かきたてちゃう。あっこれ全部俺の妄想だから! 高遠がぼーっと窓の外を見てんのは本当だけど。タニセンに俺が怒られてんのも本当だけど。
「遠藤前向け!」
 っだーもー! うるせーっつのタニセン! 俺は今高遠見るのに忙しいんだよ!
 ……とは言えない恥じらいのある高校生なんだ俺も。だってそんなこと、教室で言ったらみんなに俺と高遠の秘密っぽい甘酸っぱい関係がバレちゃうじゃん?
   お願い高遠、俺を見てくれ。そして俺に問い五の答えをジェスチャーしてください。



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遠藤は相変わらず何も聞いてません